テンパリングとは?チョコレート作りに欠かせない温度調整

チョコレートのテンパリングとは、溶かしたチョコレートを特定の温度で調整する作業のこと。
「調温」とも呼ばれ、チョコレートに含まれるカカオバターの結晶を安定した状態に整えます。
この工程を行うことで、美しいツヤとなめらかな口溶けのチョコレートができあがります。
一見難しそうに思えますが、温度管理のポイントさえ押さえれば、家庭でも十分に実践できる技術なんです!
カカオバターの結晶構造が鍵を握る
チョコレートの主成分であるカカオバターは、温度によって6種類の異なる結晶形を作ります。
このうち、最も安定した結晶は「V型(ファイブ型)」と呼ばれるもの。
テンパリングは、この安定した結晶を意図的に作り出す作業といえます。
V型結晶が形成されると、チョコレートは約33℃で溶け始め、口の中でちょうどよく溶ける性質を持ちます。
逆に不安定な結晶のまま固めてしまうと、様々な問題が生じてしまうのです。
テンパリングをしないとどうなる?
テンパリングを省略したチョコレートには、こんな問題が起こります。
☑ 固まりにくくなり、常温で手に持つとすぐに溶けてしまう
☑ 表面が白っぽくなる「ブルーム現象」が発生しやすい
☑ 食感がザラザラとして、口溶けも悪くなる
☑ 型から外しにくく、形が崩れやすい
テンパリングは手間がかかりますが、美しく美味しいチョコレートを作るためには欠かせない工程なんですね。
テンパリングの3つの嬉しい効果

①ツヤツヤの美しい見た目に♪
正しくテンパリングされたチョコレートは、鏡のような美しいツヤを持ちます。
この光沢は、カカオバターの結晶が均一に整列することで生まれるもの。
光を均等に反射するため、サテンのようななめらかな輝きが表面に現れるのです。
プロのショコラティエが作るチョコレートの美しさは、このテンパリング技術によるものが大きいといえます。
②とろける口溶けを実現
テンパリングによって安定した結晶構造になったチョコレートは、口に入れた瞬間にスッと溶けます。
人間の体温である約36℃よりわずかに低い温度で溶け始めるため、口の中でちょうどよく溶けていく感覚を楽しめます。
この滑らかな口溶けこそ、チョコレートの最大の魅力ですよね♪逆にテンパリングが不十分だと、口の中で溶けにくく、もったりとした食感になってしまいます。
③常温でもパリッと割れる食感
適切にテンパリングされたチョコレートは、常温でもしっかりとした硬さを保ちます。
手で割るとパキッと気持ちよく割れ、適度な抵抗感があります。
また、型から外しやすくなるのもメリット。
チョコレートが冷えて固まる過程でわずかに収縮するため、型から綺麗に取り出せるんです!
テンパリングが必要なチョコ・不要なチョコ

テンパリングが必要なお菓子
テンパリングが必要なのは、チョコレートを溶かして固め直すお菓子です。
- トリュフのコーティング
- タブレットチョコレート
- ボンボンショコラ
- 型に流し込んで作るチョコレート
- クッキーやケーキへのチョコレートコーティング
これらを作る際は、テンパリングを行うことで美しい仕上がりになります。
テンパリング不要のコーティングチョコレート
市販されている「コーティングチョコレート」や「パータグラッセ」は、テンパリング不要で使えます。
これらはカカオバターの代わりに植物油脂が使われているため、溶かして冷やすだけでツヤのある仕上がりに。
初心者の方や時間がないときには便利な選択肢です。
ただし、風味や口溶けは本格的なクーベルチュールチョコレートには及びません...。
用途に応じて使い分けるとよいでしょう。
ガナッシュやブラウニーには不要!
ガナッシュやチョコレートムース、ブラウニーなどの焼き菓子には、テンパリングは不要です。
これらは生クリームやバターなど他の材料と混ぜ合わせるため、チョコレート単体の結晶構造は重要ではありません。
テンパリングが必要なのは、あくまでもチョコレートを主体として固める場合だけと覚えておきましょう。
チョコレートの種類別・最適なテンパリング温度

温度一覧表
チョコレートの種類によって、テンパリングの温度が異なります。
ビターチョコレート(スイート)
- 溶かす温度:45~50℃
- 冷やす温度:27~28℃
- 作業温度:31~32℃
ミルクチョコレート
- 溶かす温度:40~45℃
- 冷やす温度:26~27℃
- 作業温度:29~31℃
ホワイトチョコレート
- 溶かす温度:40~45℃
- 冷やす温度:25~26℃
- 作業温度:28~29℃
ミルクチョコレートには乳脂肪が含まれるため、ビターよりもやや低めの温度で扱います。
ホワイトチョコレートは最もデリケートで、低めの温度管理が求められます。
温度計は必須アイテム!
テンパリングの成否は、わずか1~2℃の温度差で大きく変わります。
そのため、お菓子作り用の温度計は必ず用意してください。
デジタル温度計なら正確な温度が瞬時に分かるので便利です♪
チョコレート全体の温度を測るため、ボウルの中心部分で測定しましょう。
表面だけでなく、底の方も混ぜて温度を均一にすることが大切です。
【基本】水冷法でテンパリングする方法

準備するもの
水冷法は最も一般的なテンパリング方法です。
以下のものを用意しましょう。
- チョコレート(最低200g以上)
- ステンレスまたはガラスのボウル2つ
- ゴムベラ
- 温度計
- 50℃前後のお湯
- 冷水(氷水ではなく、10~15℃程度)
道具類は完全に乾いた状態で使用してください。
わずかな水分でもチョコレートが固まってしまいます。
ステップ①チョコレートを溶かす(40〜45℃)
まずはチョコレートを細かく刻み、ボウルに入れます。
刻むことで均一に溶けやすくなります。
50℃前後のお湯で湯煎にかけ、ゴムベラでゆっくりと混ぜながら溶かします。
直火は絶対に避けてください。
焦げてしまいます!チョコレートが完全に溶けたら、温度を確認。
45~50℃になっていればOKです。
湯煎中は湯気がチョコレートに入らないよう注意しましょう。
ステップ②冷やして温度を下げる(27℃前後)
湯煎から外し、今度は冷水にボウルを当てます。
ただし、氷水では急激に冷えすぎてしまうため、水道水に少し氷を加えた程度がちょうどよいでしょう。
常に混ぜながら、ゆっくりと温度を下げていきます。
ボウルの底に触れている部分から固まり始めるため、こまめに底からすくい上げるように混ぜます。
27~28℃(ミルクチョコレートなら26~27℃)まで下がったら、冷水から外してください。
ステップ③再び温めて作業温度にする(31℃前後)
最後に、もう一度わずかに温度を上げます。
湯煎に2~3秒だけボウルの底を当て、すぐに離して混ぜます。
この作業を繰り返しながら、少しずつ温度を上げていきます。
31~32℃(ミルクチョコレートなら29~31℃)になったら完成です!これ以上温度が上がると、せっかく作った結晶が溶けてしまうため注意してください。
温度調整にはドライヤーを使う方法もあります。
弱風で少しずつ温めると、温度が上がりすぎるのを防げますよ♪
テンパリングテストで確認
テンパリングが成功しているか確認しましょう。
清潔なスプーンやパレットナイフに少量のチョコレートをつけ、室温(20℃前後)で2~3分放置します。
表面にツヤがあり、指で触れても溶けずにパキッと剥がれれば成功です!もしベタつく、白っぽくなる、固まらないといった場合は失敗...。
温度を上げて溶かし直し、もう一度やり直しましょう。
【簡単】電子レンジでできるテンパリング方法

初心者にもおすすめ♪
電子レンジを使う方法は、湯煎よりも手軽で水蒸気の心配がありません。
温度管理さえ気をつければ、初心者にもおすすめの方法です。
600Wで1分加熱したら取り出して混ぜ、その後は30秒ずつ加熱を繰り返します。
焦げやすいので、絶対に目を離さないでください!ただし、加熱ムラができやすいため、こまめに取り出して混ぜることが重要になります。
少量のチョコレートに最適
電子レンジ法は、100g程度の少量のチョコレートをテンパリングするのに向いています。
少量の場合、湯煎では温度変化が速すぎて調整が難しくなります。
電子レンジなら短時間で溶かせるため、扱いやすいでしょう。
チョコレートが45~50℃になったら、その後の冷却と再加熱は通常の水冷法と同じ手順で行います。
耐熱ガラスボウルやポリカーボネート製のボウルを使用してください。
金属製のボウルは使えません。
【時短】カカオバターパウダーを使う方法

マイクリオは、安定した結晶形のカカオバターを粉末状にしたもの。
このパウダーをチョコレートに加えるだけで、テンパリング作業を大幅に簡略化できます!すでに安定した結晶構造を持っているため、種として機能するのです。
使い方はとっても簡単
- チョコレートを40~45℃で溶かす
- そのまま34℃まで自然に冷ます
- チョコレート重量の1%のマイクリオを加えてよく混ぜる
- 32~33℃まで温度を調整すれば完成!
通常のテンパリングでは冷却と再加熱の温度管理が難しいポイントですが、マイクリオを使えば溶かして冷ますだけで安定した結晶が形成されます。
温度管理の手間が減るため、初心者でも成功率が高くなります♪
少量のチョコレートでもテンパリングしやすくなるのも大きなメリットです。
ただし、マイクリオは少し高価なので、コストと手間を天秤にかけて選びましょう。
テンパリングの失敗パターンと対処法

失敗例①固まらない...
いつまで経っても固まらない場合、温度が高すぎた可能性があります。
作業温度を32℃以上に上げてしまうと、安定した結晶が溶けてテンパリングが崩れます。
また、室温が高すぎる(25℃以上)場合も固まりにくくなります。
対処法
もう一度最初から温度を上げてテンパリングをやり直します。
面倒ですが、確実に成功させるにはこれしかありません。
失敗例②表面が白っぽくなる(ファットブルーム)
表面に白い模様や斑点が出る現象を「ファットブルーム」といいます。
これはカカオバターが表面に浮き出てきた状態で、テンパリングが不十分だったサイン。
冷却温度が足りなかった、または最後の再加熱温度が高すぎたことが原因でしょう。
ブルームが出たチョコレートは見た目が悪く、口溶けも悪くなります。
ただし食べても問題はないので、もう一度溶かしてテンパリングし直せば再利用できますよ!
失敗例③ツヤが出ない
表面がくすんでツヤが出ない場合、温度管理が不適切だった可能性が高いです。
また、混ぜ方が不十分で温度ムラができていることも原因になります。
チョコレート全体を均一に混ぜることで、結晶が揃ってツヤが生まれます。
しっかりと底からすくい上げるように混ぜ、温度を測るときも全体を混ぜてから測定しましょう。
失敗例④ザラザラした食感
口に入れたときにザラザラとした砂を噛んだような食感になることがあります。
これは結晶が粗く不揃いな状態で固まったため。
冷却が急激すぎた、または攪拌が足りなかったことが考えられます。
ゆっくりと温度を下げ、常に混ぜ続けることで防げます。
氷水ではなく冷水を使うのも、このためです。
失敗しないための5つのポイント

①正確な温度管理を徹底する
テンパリングの成否を分けるのは、何よりも温度管理。
わずか1~2℃の違いで結果が変わるため、必ず温度計を使って確認してください。
感覚に頼らず、数値で管理することが成功への近道です!
温度を測るときは、チョコレート全体を混ぜてから測定しましょう。
部分的な温度だけでは正確に判断できません。
②水分・湿気を絶対に入れない
チョコレートは水分に非常に敏感。
ほんの1滴の水が入っただけで、チョコレートが固まって使い物にならなくなることがあります。
ボウルやゴムベラは完全に乾いた状態で使用してください。
湯煎をするときも、湯気が入らないよう注意が必要です。
ボウルは鍋よりひと回り大きいものを選び、蒸気が直接当たらないようにしましょう。
③均一に撹拌する
チョコレート全体の温度を均一にするため、常に混ぜ続けることが重要です。
特にボウルの底や縁は温度が変わりやすいため、そこからすくい上げるように混ぜます。
放置すると部分的に固まってしまい、ムラができます。
ゴムベラで空気を入れないよう、静かに混ぜるのがコツです。
④適切な室温を保つ(20〜22℃が理想)
作業する部屋の温度も、テンパリングの成否に影響します。
理想的な室温は20~22℃。
暑すぎるとチョコレートが固まらず、寒すぎると急激に固まって作業できません。
冬場に暖房をガンガンに効かせている部屋では失敗しやすくなります...。
少し寒いくらいの室温で作業しましょう。
⑤チョコレートの量は最低200g以上
少量のチョコレートは温度変化が速すぎて、温度管理が非常に難しくなります。
テンパリングを行うなら、最低でも200g、できれば300g以上を扱うことをおすすめします。
量が多い方が温度が安定し、失敗しにくくなります。
余ったチョコレートは保存して、次回のテンパリングの種として使えますよ♪
季節別の注意点

夏場の高温・多湿への対応
夏場は室温が高く、湿度も上がるためテンパリングが難しくなります。
できればエアコンで室温を20~22℃に保った環境で作業してください。
湿度が高い日は、特に水分混入に注意が必要です。
雨の日のテンパリングは避けた方が無難かもしれません...。
冬場の低温・乾燥への対応
冬場は逆に室温が低すぎて、チョコレートがすぐに固まってしまいます。
暖房を使う場合は、チョコレートに直接温風が当たらない場所で作業してください。
部分的に温度が上がると、温度ムラの原因になります。
低温すぎる場合は、軽く暖房を入れて20℃前後に調整しましょう。
ただし温めすぎには注意してくださいね。
余ったチョコレートの保存と活用法

正しい保存方法
テンパリングしたチョコレートが余った場合、捨てずに保存しましょう!クッキングペーパーの上に薄く流して固め、完全に固まったら包丁で刻みます。
刻んだチョコレートは密閉袋に入れ、冷暗所で保存してください。
冷蔵庫に入れる場合は、しっかりと密閉して湿気を防ぎます。
使用前に必ず室温に戻してから使いましょう。
焼き菓子への再利用アイデア
余ったチョコレートは、ブラウニーやガトーショコラなどの焼き菓子に使えます。
これらは溶かして生地に混ぜ込むため、テンパリングの状態は関係ありません。
無駄なく美味しく使い切れます♪
ホットチョコレートドリンクにするのもおすすめ。
牛乳を温めて溶かせば、濃厚なホットチョコレートができあがります。
次回のテンパリングで再利用
保存しておいたテンパリング済みチョコレートは、次回のテンパリングの種として使えます。
新しくチョコレートをテンパリングする際、刻んで加えれば作業が簡単に!すでに安定した結晶構造を持っているため、温度管理がしやすくなるでしょう。
一度テンパリングしたチョコレートは、何度でもテンパリングし直せます。
よくある質問Q&A

Q. 板チョコでもテンパリングできますか?
一般的な板チョコでもテンパリングは可能ですが、おすすめはしません。
市販の板チョコには乳化剤などが多く含まれており、純粋なチョコレートとは成分が異なります。
テンパリングはできますが、仕上がりの美しさや口溶けは製菓用チョコレートに劣ります。
本格的に作りたいなら、クーベルチュールチョコレートを使いましょう。
Q. テンパリングマシンは必要ですか?
家庭で作る分には、テンパリングマシンは必要ありません。
プロの現場では200万円以上する機械が使われていますが、家庭では湯煎と温度計で十分です。
手間はかかりますが、丁寧に作業すれば同じように美しいチョコレートができます!むしろ、温度計に投資する方が重要です。
Q. 冷蔵庫で急速に冷やしてもいいですか?
テンパリングしたチョコレートを冷蔵庫で急冷するのは避けましょう。
急激な温度変化は結晶構造を不安定にし、ブルームの原因になります。
常温(20℃前後)でゆっくり固めるのが理想です。
ただし、夏場で室温が高すぎる場合は、短時間だけ冷蔵庫を使っても構いません。
5分程度で取り出し、その後は室温で固めましょう。
Q. 一度失敗したら最初からやり直し?
水分が入っていない限り、何度でもやり直せます!失敗したチョコレートを再び溶かし、正しい手順でテンパリングすれば問題ありません。
諦めずに挑戦してください。
ただし、水分が混入してボソボソになった場合だけは、テンパリングできません。
その場合は焼き菓子などに転用しましょう。
Q. テンパリングの所要時間はどれくらい?
方法にもよりますが、だいたい15~30分程度です。
水冷法なら20~30分、電子レンジ法なら15~20分が目安になります。
慣れてくれば、もう少し短時間でできるようになるでしょう。
急いで温度を変化させると失敗しやすいため、余裕を持って作業してくださいね♪
まとめ|テンパリングをマスターして本格チョコレート作りを楽しもう

チョコレートのテンパリングは、温度管理さえ押さえれば決して難しい技術ではありません。
最初は失敗することもあるかもしれませんが、何度か挑戦するうちにコツがつかめてきます。
正しく手順を踏めば、自宅でもプロのような美しいチョコレートが作れるのです!この記事で紹介した温度や手順を参考に、ぜひチャレンジしてみてください。
美しいツヤとなめらかな口溶けのチョコレートができたときの喜びは、きっと格別なものになるはず♪大切な人への贈り物にも、自分へのご褒美にも、手作りチョコレートは特別な存在です。
テンパリングをマスターして、本格的なチョコレート作りを楽しんでくださいね。



























